タイトルの通り今回は自身のイヴォーク・コンバーチブル(毎回長いのでイヴォコンと呼ぶことにする)のエンジンについてとイヴォークがジャガー・ランドローバーにもたらした影響についての話。
初代イヴォークは2011~19年(約8年)という比較的近年では長めの期間販売されたモデルとなった。これには色んな事情が有ると思うが、一つにはジャガーランドローバーが比較的長いモデルサイクルを採用していることも有ると思うし、イヴォークは2008年にフォードからタタ・モーターズに売却された初期に出たモデルだったことも有り、ジャガーランドローバーに取っては重要な試金石を担ったモデルでも有った事も関係しているだろう。
コンセプトカーが発表されたのが2008年だったので、既にフォード時代から開発されていたとは思うが、特に中期以降はタタ・モーターズの資金力とイヴォーク自身のヒットがもたらした成功体験をベースに、ミッション(アイシン6速→ZF9速へ)、インフォテインメントシステム(InControl)、自社製エンジン(エコブースト→インジニウムへ)らの刷新や導入を進めながら陳腐化しないよう努めたと言えるのではないだろうか。
イヴォーク自体は後に繋がるスポーティで都会的なプレミアムSUVブームの先駆けとなり、当時のランドローバーにとって望外な大ヒット作となった。タタ体制となったジャガーランドローバーにとってもこの結果は「ブランドを作り上げていく」という大きなモチベーションになったのではないだろうか。
実際にこの後、イヴォークとシャシーを共有し、7人乗りやサイズに比して広いラゲッジスペースを確保したアクティブなスタイルの「ディスカバリー・スポーツ」も登場させ、"デザイン志向で都会的なSUVクーペ"である「イヴォーク」と"家族でのキャンプやアクティブなライフスタイルに呼応したワゴン"的な「ディスカバリー・スポーツ」という棲み分けも行った。
更にこの後ジャガーブランドサイドに対する大きなテコ入れが始まり、ジャーマンスリーに対峙出来る"英国車"の復権に向けたプロセスがイアン・カラムのネオ・ブリティッシュネスと言える様なデザインを纏った「XE」から始まったと言えるだろう。
(厳密には1世代前のXF時代からイアン・カラム・デザインなのだが、フォード末期~タタ初期の初代XFはボディは後につながるスタイルなものの、何度かのデザイン変更を受けた。また、初代XFにおけるシャシー等ベースは旧Sタイプの流用とされている)
Jaguar XE
ロングノーズの伸びやかなフォルムとショートテイルのスポーティさ、クーペ的にスラントしたCピラーなど、X-Typeからデザインコンセプトが一新されたXE。自身も所有していた1台。足回りも燃費も最高で良いクルマだった。リアからのフォルム、フェンダーの造形は量産車としては素晴らしいと思う。ジャーマンスリーよりむしろライバルは伊達なイタ車、「アルファロメオ・ジュリア」だと思う。
XEでプレミアムラインの主要セグメント(流石に近年ではこの位置もSUVに明け渡しつつあるが、それでも3シリーズやCクラスへの需要は少なくない)であるDセグメントに再挑戦し、更に同プラットフォームをベースにEセグメントの「XF」を刷新、また、同プラットフォームを用いたD~Eセグメントのジャガー史上初のSUV「F-Pace」も発表した。因みにコンパクトSUV「E-Pace」はイヴォーク、ディスカバリー・スポーツと同一プラットフォームを採用している。
ジャガーの話はこれ以上ここでしても長くなるので割愛するが、それでも当初F-Paceが出ると聞いたときには驚いたものである。ジャガーとSUVはやはり古い人間ほど結びつかなったので。一方でタタ体制以降、ジャガーとランドローバーはベースを共有する同一メーカーな訳で、SUVの知見も多分に有るのだから、SUVブームも勘案し、それを活かさない手は無かったのである。
今となっては更にプレミアムなアストンマーチンやランボルギーニ、そしてロールスロイスやベントレーにもSUVは存在するので、これはこれでSUVが"現代のサルーン"として認知されたということなんだろう。「ミニにSUVは流石にやりすぎ」なんて思ってた時代は随分昔に思える(10年くらい前の話なのだが)。
閑話休題、イヴォークの成功、ジャガーの復権を経て、ランドローバー自体に還元されたものは何だったのだろうか。僕はそれを「モダンなラグジュアリーさ」だと捉えている。ディスカバリーやディフェンダーのような、実用性やワイルド感の有る車両は元より得意だし、重厚で鷹揚な高級感はレンジローバーで既に確立しているが、近年のSUVブームの鍵となる要素の一つはワイルドさ、鷹揚さだけではなく、「都会が似合うモダンなデザイン」と言えるので、この部分をジャガーやライバルから吸収したのではないかと考えている。その始まりが「レンジローバー・ヴェラール」だったと思うのだ。ヴェラールには「引きの美学」と言えるような、キャラクターラインやドアノブまで排除しつつ完成した美しいフォルムを持ち、僕も見惚れてしまうほどだが、この感触はイヴォークの成功を1つ先に押し進め、更にはイヴォークで有ったようなネオ・ブリティッシュなポップさ(言うなれば、ダニー・ボイルの映画から出てきたような感じのするミニ辺りで確立したスタイル)すら控え、モダンなプレミアムSUV像を提示したように思える。それを証拠に2019年にモデルチェンジされたイヴォークは、スタイルこそキープコンセプトだが、初代イヴォークで特徴的だったオーバーフェンダーやサイドのキャラクターラインの凹凸は抑えられ、ヴェラールと同様にドアノブも隠れるタイプとなり、ヴェラールとの共通性が高まり、プレーンでモダンな印象が高まった。
Land Rover Range Rover Velar
中国市場向けの影響か、ドイツ車でも押し出し感やキャラクターラインがどんどん強くなっている昨今だが(New BMW4シリーズとかには正直驚いた)、ヴェラールの無駄のない造形美は発表時、異彩を放った。これがこれまでの5シリーズとかEクラスのステーションワゴンに代わる、モダンで都会的なプレミアム・ワゴンなのかも知れない。因みに全長は4.8mくらいなので何とか日本でも取り回せるが、全幅はいよいよ2mを超える。
こんな感じで、イヴォークのヒットとジャガー・ランドローバーの復権について長く語ってしまったが、現在のジャガー・ランドローバーを語る上で重要なマイルストンだったレンジローバー・イヴォークを語る上で触れておきたかったのでもう少しお付き合いください。
-初代イヴォーク最晩年に登場したコンバーチブルには2種のエンジンタイプが存在する-
さて、自身の所有者の1つが「レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブル」なのだが、これは名前のまま、イヴォークのコンバーチブルモデルで、今の所初代にのみ設定されていた。販売時期が2016年後半からモデルチェンジに至る2019年途中までなので、実質2年強しか出回らなかったので、普通だと意外に知られていないかも知れない。勿論エンスーな方は普通にクルマ情報サイトやショールームで目にしているだろうけど。
セダン(クーペ)の流麗なコンバーチブルとまた趣の違う、イヴォークらしさを活かしボディ容積の大きさの感じるフォルムが良い。フロントから厚みが直線的(斜線)に増えていくデザインも後ろ下がりなルーフが無いので目立つ。
そんなヒット作であるイヴォークの中でも異端なコンバーチブルだが、これも前回触れたとおり、SUVかつオープンというクルマは結構希少で、当時車好きの間では結構話題になったのはないかと思う。
個人的には元々良かったイヴォークのスタイルに幌を被せることがこんなに似合うなんてという気持ちと、自身がオープンカー(過去イヴォコン以外に2台所有経験あり)好きだったので一目惚れだったのだが、これを普通のイヴォークと同じように「プレミアム感のあるコンパクトSUVで、でも人も3~4人なら乗せられて、荷物も意外と入るし倒せば結構ワゴンみたいに使える」と考えてはいけない。まずショールームで最初に見たとき驚いたのは後席の狭さ!コンパクトって言ったって4.3mの全長と1.9mもの全幅が有るんだからもう少しどうにかなるのでは?と思いつつもとにかく後席はタイト。幌を仕舞う関係上横が狭くなるのは仕方ないにしても、リアはフットスペースが兎に角狭い。昔乗っていたミニ・コンバーチブルと大差ないような。。そしてこちらも以前乗っていたVWイオスよりは圧倒的に狭い!イオスはかなりマイナーなクルマになってしまったが、実は後席もオープンカーとしては結構広かったんだよね。センターにトランクスルーも付いてたし、ハードトップを仕舞うためもありトランクも大きかった。サイズは4.4m*1.8mだから対して変わらないでしょ。まぁ全てはデザインの為に有るイヴォークと、どんなに趣味性が高くても実用性を考えるVWの違いなのかも知れないけど。
それ以外にもハッチバックみたいな形なのにリアシートは倒れない(ミニは倒れたのに!)、固定式だからトランクと繋がってないし(自身のモデルはトランクスルーが付いてない!)、トランク自体も何だか小さい。そう、このクルマはどうしてもイヴォークのスタイルとそれをオープンで乗りこなしたいという
要するにイヴォコンはこのクルマにしか無い素晴らしさと、このクルマ故の欠点が明確に存在するのである。プロコンが明確化するのでバランスは良くない。それでも僕はこのクルマにとても満足している、有る一点だけを除いては。。
別話と導入が長かったが、その気になる点が今回のテーマ「エコブースト」である。僅か2年強の販売期間でイヴォコンはパワーユニットが一度置き換わっている。それはちょうどジャガー・ランドローバーがXEのリリース前後に"インジニウム・エンジン"をリリースし、次々搭載していたことも関係しているのだが、そもそもイヴォークがデビューした2011年の時点では、ジャガー・ランドローバーは自社開発のダウンサイジングエンジンはまだ開発できておらず、元々フォードグループだった経緯もあり、当時の多くのジャガー・ランドローバーの車種でエコブーストの2Lエンジンを採用していた。イヴォークもその一つである。
エコブーストはダウンサイジングによる直噴ターボの第一世代とも言うべきエンジンで、当時のフォードの多くのモデルに搭載された枯れたエンジンと言える。タタ傘下になって暫くはこのガソリンエンジンの"エコスブースト(Ecoboost)”とクリーンディーゼルである"デュラトルク(Duratorq)"をフォードから供給されていた。これらは当時(今でもかもしれないが、最近フォードの情報は日本だと少ないので)欧州市場を重要視していたフォードらしく、自社モデルは勿論のこと、ジャガー・ランドローバーだけではなく、現在はプレミアムラインのライバルと言えるボルボ(ボルボも中国ジーリー傘下になる前はフォード傘下だった)、シトロエン、プジョーなど、ヨーロッパを代表するブランドの多くに搭載された言わば「欧州市場を意識したダウンサイジング・エンジン」だったと言えるだろう。因みにデュラトルク・ディーゼルを積んだイヴォークやジャガーXFは日本市場には正規導入されなかった(一部では並行輸入でイヴォークの2.2Lディーゼルとかは人気が有ったようだが)。
一方でジャガー・ランドローバーはタタ傘下になってから、新たなモデルの開発に加え、自社製のエンジン開発についても急いでいた。特に2~3Lのエンジンが必要な主要セグメントにおけるエンジン開発は新たな量産モデル開発に於いて最重要課題でもあったはずだ。とは言え、まずは顔となるジャガー・ランドローバーの各車種の開発(イヴォークやXE等)を行いながら、順次載せ替えていくという方式を採用した。これが出来たのは勿論早くブランディングを進めなければという現実も有ったと思うが、一方でエコブーストらフォードのエンジンには一定の信頼感も有ったからではないかと考えられる。
既に自社フォードでフェイスタやエクスプローラーのような主要車種への導入実績に加え、先述のように多くの欧州車主要セグメントで採用されたその実力を疑う必要はないので、エンジン開発にも時間をかけられたのではないだろうか。
実際僕もエコブーストのエンジンに何度か乗ったことが有った。自身が所有していたジャガーXEはインジニウム・ディーゼルのモデルだったが、メンテや点検時の代車として借りたクルマがエコブースト世代のXEやXFだったのでこの頃エコブーストのジャガーに乗っていて、その辺りは自身の過去のブログでも記しているので興味が有れば確認してほしいが、見返してみると今イヴォークに乗って感じているプロコンが余り変わらないと感じた。我ながら短期間でもクルマを味わいながら乗っているクルマ好きなんだなと改めて。
ここまで話したとおり僕のイヴォコンはエコブーストを搭載した世代のモデルだ。先に記した通り初代イヴォークにはフォード系エンジンと自社製インジニウム・エンジンの双方が時代によって採用されたのだが、インジニウムが搭載されたモデルは末期の2018~2019年途中までという実質1年強であり、ほぼエコブーストのモデルが多くを占める。それはイヴォコンにおいても変わらない。
本音を言えばイヴォークのようなSUVこそインジニウム・ディーゼル搭載のモデルが欲しかったのだが、自身の購入時期の都合もあり、インジニウム導入前のモデルを購入したので、搭載エンジンは必然的にエコブースト2L直噴ターボとなった。ただ、乗ってみるとこのエンジンが中々良い。横置きなのも踏まえて少し前の直噴ターボに有りがちな振動はゼロではないが、抑えられている方かなと思うし、何よりこのエンジンは吹け上がりが軽やかで良い。以前のXE代車で気になった極低回転域でのトルクの薄さは2tを超える重さが有るにも関わらず余り感じない。すぐに回転がトルクスポットである2~3000rpm辺りまで上がるのでスッと発車してくれるし、もう少し踏み込めば2Lターボとしては結構なハイパワーな部類(240馬力)なので、SUVとしてはスポーティに加速してくれる。厳密にはXEの時の200psタイプのエンジンではないのでトルクもこちらの方が高いのが影響しているかも知れない。
この辺りは良く考えてみれば8.42kg/PSというパワーウエイトレシオ等を考慮すれば、結構優秀だし、エコブーストが他の直噴ターボと少しキャラクターが異なることも関係している気がする。一般的な直噴ターボは燃費やトルクを考慮しロングストロークが採用されることが多いのだが、エコブーストは僅かながらもショートストローク(87.5mm*83.1mm)である。この辺りもスポーティな味付けに寄与している感じがする。僕の直噴ターボのイメージは、踏み込んだ時にザラつきの様な重さを少し感じつつも、低い回転数でトルクやパワーのピークが来るので、想像よりも加速しているというイメージが有る。例えば小柄にしてはかなりハイパワーだったミニ・クーパーSはエンジンがPrinceと呼ばれるBMWとPSAが共同開発した1.6L直噴ターボだったのだが、クルマとしては加速などはかなり速かった記憶は有るけど、それでも加速時のザラつきみたいなのは感じた方である。その辺りがエコブーストは余りなく、ブローオフサウンド的な音を少し聴かせながら、小気味よく回っていく感じだ。
だからイヴォコンは見た目だけではなく、乗っていても結構楽しい。4WDという事も有るのか、ハイパワーでもFF的トルクステアも余り感じないし、ワイドトレッドと良い足回りの恩恵かコーナリングでもSUVとしては結構気持ちよく、怖さを感じない。まぁジャガーXEみたいな張り付き感は勿論無いけど、それを望むならSUVに乗るなって話になるからね。
ただ、、これがそのままネガティブ要素になる。重いが良く回る小排気量ターボエンジンと言う構成なので
び っ く り す る ほ ど 燃 費 が 悪 い !
率直に、今まで乗ってきたどのクルマよりも悪いと思う。VWイオスもGTIのエンジンを比較的重めな車体に載せて居たので燃費は良くなかったが、それでも街乗りで悪くても7km/Lくらいは走ってくれたと記憶している。しかし、イヴォコンは街乗りで余り考えずに走っていると、先ず5km/Lを超えない。。高速なども交えて走れば7~8km/L くらいは行くことが有るが、下手をすると5km/Lを割り込むときもあり、燃料計は現代車としては信じられないほど直ぐに下がってくる。
高速中心だと意外と高くなる傾向も有るのだが、考えても見れば2トンのクルマを2Lのエンジンがそこそこ小気味よく回すというのは、それだけエンジンに負荷がかかる訳で、この辺りは「通常のイヴォークより250kg以上重い事」、「エコブーストが直噴ターボとしては対して燃費は優れてない」事が重なり合っての結果だと思う。
また、細かい燃費感は何処かで付けてみようと思うが、取り敢えず燃費の悪さだけでは如何ともし難く、「やっぱりインジニウム・ディーゼルのモデル買えばよかったかなぁ~」とふと思ってしまう時がある。インジニウム・ディーゼルはXEで経験してるし、巡航時の燃費はとても良かったのを覚えているので余計である。そして軽油の燃料費が安い!320dもXEディーゼルも、あのサイズでトータルの燃料費はかなりお安かったのは良く覚えているので、この燃費の悪さには焦る。
インジニウム・ディーゼルのイヴォコンを乗っている人がどんなものか分からないが、それでもXEの頃を思い出すと、都心でも8~9km/Lは行くのではないだろうか。高速巡航なら15km/Lは優に狙えるだろう。まぁディーゼルは燃費で戦えば勝負にならないので、逆にインジニウム・ガソリン搭載のイヴォコンに乗っている人が居れば、その数値を聞いてみたいものだ。
なのでちょっとした街乗りでは先ずイヴォコンよりは500xを乗ってしまう。まぁちょい乗りをしない方がクルマには良いと聞くので大事に乗るようになったと思うしか無い。。
そんな感じでエコブーストのイヴォコンは良さが悪さと言う感じだが、他にそうないSUVコンバーチブルなんだから、と言い聞かせ楽しもうと思う。
今回はこの辺で。
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