ミニ史上最大?のマイナーチェンジへ(F世代ミニ・ハッチがゲトラグDCT化)

-エクステリアはユニオンジャックテール、メカはDCT採用-

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ジャガーのブログでミニの話が続くが、、ミニがマイナーチェンジを行うことが発表された。既に完成されているとも言えるBxx系のエンジンは多少のパワーアップや3気筒モデルのバランサーシャフト見直しなど、スペック的には軽微だ。それは毎回マイナーチェンジでは多少変わる項目だと思う。

http://www.motoringfile.com/2017/12/18/mini-dct-dual-clutch-transmission-makes-official-debut/

恐らくミニファンの人たちには既に以前から事前情報は得ていただろうし、日本のミニ系情報サイトでも詳細は公開されている。エクステリアとして特筆すべきところはテールランプのユニオンジャック化だろう。これは去年のJCW GPコンセプトやEVコンセプトで既に披露(予告?)されたものの実装とも言えるが、実はもっと前に無きMG2シーター・オープンをミニなりにオマージュしたような"ミニ・スーパレッジェーラ"でもユニオンジャックなテールランプは装着されていた(これ、ずっと正式発売を待ちわびてるが出る気配も無い・・)。

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"ミニ・スーパレッジェーラ・ヴィジョン(2014)"イタリアのカロッツェリアによってデザインされたミニは息を呑むほど美しい。そして、古い英国2シーター・スポーツへのオマージュも見え隠れする。色々噂は有ったけど結局販売は叶わなそうだ。やっぱMG-TF探そうかな、大分値段も安くなってきたみたいだし。

だが、今回特筆すべき事はトランスミッションの入れ替えだ。入れ替え時期はグレードによって多少ずれるようだが、少なくとも今年度中に一部モデルを除いて初代から長らく利用してきたアイシンAWのトルコンATから、ミニでは初採用となるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)が採用される。メーカーは海外のサイトを見る限りBMWのMシリーズでも採用されているゲトラグ製のようだ。

http://www.motoringfile.com/2017/05/12/mini-dct-is-coming-here-are-the-details/

ポイントは、サイトでも書かれているように採用範囲で、段階を追ってマイナーチェンジ後から7速DCTが順次ミニ(今回の対象は3、5ドアハッチバックとコンバーチブル)に搭載されていくようだけど、採用グレードは以下になる。

ワン(One)、クーパー、クーパーD、クーパーS

一方で以下のグレードは引き続きアイシンAWの8速ATが継続される。

クーパーSD、ジョン・クーパー・ワークス

何だかややこしい採用の仕方で、何故クーパーSDとジョン・クーパー・ワークス(JCW)は採用されないのかという事になるが、上記サイトでは、恐らく上記2グレードはトルクがかなり大きく(SD/36.7kgm、JCW/32.6kgm)、DCTユニットには不向きだからとレポートされている。(現行のアイシンAW製ATは45~50kgmまで許容するモデルと思われる)。

「え、でも50kgm超えのBMW MでもゲトラグDCTは採用されてるじゃん」って思われるだろうし、僕も最初はそう思った。もしかしてVWの7速DCTみたいに乾式なのかなと思ったが、湿式クラッチのようだ。これはあくまでも自分で調べたレベルだが、ゲトラグのDCTはコンパクトなモデル(FF用)だと湿式でも最大トルク耐性が320Nm(32.6kgm)のため、JCW、SDには不向きのようである。因みにMに搭載されているDCTはFR用の大型なもので、耐性トルクは700Nmにまで達する。なので今回はDCTのスペック的に全置換えは出来なかったのだろう。

「参考:ゲトラグ製FWD用7速DCTのデータシート」

参考までにVWのDCT(DSG)は当然FF用だが上位かつパワーモデルに搭載されている6速DCTは以前よりゴルフGTI等に採用されているし、最新の7速DCTは280ps/35.7kgmの新作クーペ、"アルテオン"に採用されているので、単にFF用DCTの限界というよりは、メーカーの考え方、製造過程の違いだと思われる(VWはシェフラー製、BMWミニはゲトラグ製と言われている)。

所で、何故ミニは今になってトランスミッションの置き換えを行うのだろう。エクステリアやエンジンのアップデートはマイナーチェンジで良くある話だし、多段ATの過渡期には確かに年次変更とかでもミッションが変わったことは有るのだが(初代XFなんてその例だろう)、ATからDCTへの変更というのは結構大きい変化だ。

VW(グループ)がDSG(Sトロニック)として広く普及させたDCT、当初は鳴り物入りで「トルコンに変わる次世代のオートマチック・トランスミッション」として紹介されたものの、減速時の癖や特にストップアンドゴーが多い日本などでは耐性も含めてネガも散見した。特に普及モデルに搭載された乾式クラッチのDCTは問題が多かったようだ。

以前イオスでDSG(DCT)に触れている個人の印象として言うと、僕はDCT支持派だ(DCTが上ということではなく、トルコンもDCTもそれぞれ良さが有ると思うという意)。変速ショックを出さず矢継ぎ早にシフトアップしていくその様は、比較的スポーティなエンジンを積むイオスとの相性も良かったし、スリップ感無く、かと言って硬めのトルコンみたいにソリッド過ぎるわけではないダイレクトなフィールは"新しいオートマ"そのものだった。その前がミニクーパーのCVTだったこともあり、ちょっと差が激しかったのかもしれないが。

ただ、たしかに減速時の処理はイマイチ、特に街乗りでダラダラしている時は特有の癖も見受けられた記憶が有る(シフトダウンは遅れがちになったりしていた、しかもランダム性も有る)。

そういう意味では良く言われているように、DCTはスポーティな乗り味を特徴とするモデルには合っているとは思う。その代わりストップアンドゴーとかも含めた全体で捉えればスムーズとは言えないので、ラグジュアリーなサルーンとかには似合わないのかもしれない。ミニは確実に前者なのでそういう意味での合点はいく。

とは言え、DCTへの置き換えで気になるところとして、重量が全て増えていることである。つまりわざわざ重いトランスミッションを今回は採用したのだ。普通このサイズのクルマでは余り有り得ないと思う。そこまでしてDCTに変えたい理由があるとしたら、以下の様なものが上がるのだが

・何らかの理由でDCTの方が燃費や環境性能が上がる

→変速タイミング調整がより細かく出来るだとか、パワーロスが少なく出来るとか、そう言った要素が有るなら起こり得る可能性はある。因みに現行ミニ5ドアのJC08モード燃費はクーパー(1.5Lガソリン、6AT)が18.3km/L、クーパーS(2Lガソリン、6AT)が16.4km/L、クーパーD(1.5Lディーゼル、6AT)が23.9km/Lとエコカーとまでは言わなくても昔に比べて随分良くなっている。クーパーDなんて高速巡航だけなら30km/Lが見えてくるだろうし、ハイブリッドでも敵わないだろう。つまり良好なんだよね。。

・現行のATには何らかの課題がある

→DCTが優秀かどうかはともかくこういう理由も有りえるのかなと。実は自分がR55クラブマン(アイシンAW製6速AT)に乗っていた時、一番気にかかったところの一つがトランスミッションだった。イオスの後がR55のクーパーSだった訳だけど、スリップ感こそ少なくかなりソリッドなチューニングがされていたが、何というか硬いと言えば良いのか、愛車紹介でも書いたけど、特に始動時には変速タイミングも引っ張りがちで、変速ショックもイオスの後だと多少感じるようになった。少なくとも2010年代のATとしては少々前時代的なのかなと言うのは否めない気がしたのだ。

だが、F世代のミッションは6速ATもブラッシュアップ版だし、8速ATは採用当時はかなり新しいミッションだったはず(アイシンAWの8速ATはボルボにも採用されている)。だから一概にR世代のミニとの比較は出来ない。F世代のミニは6速、8速、もしくはガソリンやディーゼルも含め何度も試乗しているが、乗ってすぐにミッションは随分良くなったかもと思ったので。とは言え試乗だけではこのあたりはわからないところでは有る。

BMWがオートマチック・トランスミッションに求める質の向上なども考えられる。BMWのFRモデルの多く、いや、ヨーロッパ車のFRモデルに多く採用されているZF製の8速オートマチック・トランスミッションの完成度が高すぎるというのも有るのかもしれない。FFベースのE-Paceを除く全てのジャガーのATもこれだ。正直このミッションの存在がDCT化に流れそうな雰囲気に待ったをかけたと言っても過言ではない(VWの乾式クラッチDCTにおけるトラブルが頻発したことも大きいが)。

確かにZFの8速ATを偶然2台乗り継いでるが(BMW320d、ジャガーXE)、変速の時の滑らかは双方ともに同系ミッションということも有り良く似ているし、シルキーな変速フィールはもう慣れてしまうと後に戻れない感じもする。キックダウンこそ少し反応がおっとり目な気もするが、スポーツモード時のシフトダウンのブリッピングの効き方も優秀だし、変速自体は早いというか段々気づかなくなってしまう類のものだ。スポーティかつ相応のエレガンスさも求められるサルーンにジャストなミッションだと思う。ストップアンドゴーの多い日本でも細かくテンポの良い変速が相性も良い。

そう言った「基準」から勘案すると、何らかの理由でFFのミッションも見直したかった、そして、DCT有りきというよりはFFに載る優秀な多段ユニットを検証した結果としてゲトラグの7速DCTが採用されたという可能性も。スポーティなクルマに合うと言われるDCTだし、ミニとは上手く行けば相性も良さそうだが、今回の変更、ミニだけでなく同じプラットホーム、エンジンであるBMW2シリーズやX1にも及んだので、スポーティ≒DCTということだけでは無さそうだ。

だが、自分はF世代のミニユーザではないので今のATの評価は出来ない。アイシンAWのミッションも世界的に評価は高い。必ずしもDCTにしたからと言ってポジばかりではないかも知れない。そもそも先述のようにミッションの入れ替えで重量増となってしまっている。なので、これはミニだけではなく、BMWのFFモデルも含み全体でバランスを取った結果、DCTが扱いやすいという結論に至ったのかもしれない。同じモジュラーユニットを共有しながらBMWはDCTでミニはトルコンで、サプライヤも違うとなれば、全然合理的ではなくなってしまうので。

・どちらかと言えば政治的な理由

→上記後半とも関係するが一番はこれなんじゃないかなと思う。ゲトラグとの取引で何らかの有利な条件を引き出せた。スペックやチューニングも随時改善しますよとか生産ロットの安定(優先)供給案を受けたとか。ゲトラグからしても、少数生産のMとかだけでなく、もっとボリュームが見込める量産車に自社製品を展開したいだろうし(実際今回のDCTはBMWとミニのFFモデルに多く展開予定)。

全体導入までに妙に段階を追う理由としては、アイシンAWとの提供契約期間も有るのではないかなと邪推している。

そのアイシンAWとの関係も考えてみたが、トヨタ系列なので、BMWとの関係は悪くないはずだ(技術提携を結んでいて、Z4とスープラを兄弟車として共同開発しているのは良く知られているだろう)。なので昔のダイムラー・クライスラーとのトライテック社みたいな「意図せぬ技術共有」とかは無いはずだ。自動車売上最大級のエース(トヨタ)と最大のニッチ層(BMW)を抱える両者はバランスが良いと思う。

まぁそうなるとやはり理由はイマイチ判然としないのだが、それはそれ、ミッションはミッションで色々取引が有るのだろう。

蛇足だが、FR用8速ATを供給しているZFとの関係は揺らぐことは無さそうだ。そう言えばZFの場合FF用の多段ミッションとなると、9速AT(イヴォーク、チェロキー、ジャガーE-Pace等に搭載されている)も有るが。

あと、AT関連で大きいのが「シフトバイワイヤー」化かな。サイトでもわかるようにシフト周りのデザインが大きく変わっているけど、ここはようやく兄貴分のBMWと歩調を合わせたという事だろう。ギアチェンジの時、物理的にガチャ、ガチャとシフトを下げていくのではなく、全てクリック、つまり電子制御で操作できるコントローラ式に。これ、BMW最初乗った時、「高級だなぁ」と感心した(笑)。Pが同一線上から外れたので最初少し戸惑うが、慣れるととても扱いやすい。

確かにシフトって旧態依然だったかもと、この電子制御シフトに触れて思った。勿論しっかりとした操作感、位置感の必要なマニュアルはともかくとしても、オートマって運転中はDかNが多いわけだし、細かいギアチェンジはパドルシフトとかはとっくに採用されているわけで、これが普通になるんだろうなって。ただ、シフトノブとしてはちゃんと残っているので何となくギアに手をかけておきたい時、意識せず有ると思うのでそこはキープされていて良いのですよ、質感的にも触りやすい。こういう所が後に回される感じがちょっとミニファンとしては少しもどかしいんだが。iDriveなんてR世代の頃は載せようとすらしてなかった気がするし。価格だって実質1シリーズと変わらないどころかオプション派手に行けばあっと言う間に超えちゃう時も有るくらい高いんだからもう少し何とかして欲しい。

シフトバイワイヤーと言えばジャガーもそうで、ダイヤル式のアレ、"ジャガー・ドライブ・セレクター"がエンジン始動とともにウィーンとせり上がってくるのだけど、これ、最初は「おぉ」とか思うんだけど、別段使いやすくないんだよな。特に始動時にせり上がるまで待たされる感じがちょっと。。何か運転中も手持ち無沙汰だし、Sに入れても(入れるというよりダイヤル回す)シフトノブみたいに気持ちのスイッチが入らない(笑)。分かりますかね、この感じ。

まぁパネル周辺はスッキリしていて悪くないんだけどね。恐らくドライブセレクターだとダッシュボードの操作ボタンとかもシフトノブに邪魔されない分低い位置まで配置できるとか利点も有るのだろうけど、僕は何か棒が出てる方が好きかな。

まぁこれからレビューも増えてくるだろうし、試乗も何れ出来るようになると思うので、機会が有れば、また、ここで。

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