インジニウムは進化中 ~エンジン交換後レポート その1~

-ジャガーとランドローバーの進化は急ピッチで進んでいる-

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エンジン交換後、170km程走った時の燃費データ。ほぼ街乗りで11.6km/L、新しいエンジンは普通燃費が悪くなりやすい上で、以前より確実に街乗りの燃費が良くなっている。

バランサーシャフトの不良から年末エンジン交換に至った僕のジャガーXEだが、年が明けてその後、状態は良好である。まぁエンジンを取り替えるってパーツ交換というレベルではないので、そもそもそれまでの自動車のフィーリングとは変わってしまうくらいの変化が起きることが有る。今回はそれが良い形で起きていると思う。

理由は、個体差もあるが、トルクの出方も違う感じがするのでもっと深い所、年次改良だと思って良いだろう。昨年購入した僕のジャガーXE、実際の製造年は2016年だと思うのだが、そこから1年強、インジニウム・ディーゼルはXEやXFだけでなく、JLRの多くの車種に採用され、ジャガー・ランドローバーの屋台骨といえるようなエンジンになっている。それだけ社運をかけたエンジンと言えるのだ。問題が有れば早急に改善しなければJLR全体の評判が落ちてしまう。そういう意味では年次改良どころか"随時改良"されているのではないかと思う。

特にエンジン交換後に感じた変化をざっと書いておくとこんな感じ。

・トルク曲線が滑らかになった

以前も書いたがインジニウムは極低回転ではやや力感がなく(最大トルクがかなり大きいのでそう感じやすいのかもしれないが)、そのかわり最大トルクに達する付近である2000rpm直前から3000rpm位までは急激にトルクが立ち上がるような所が有るのだが、これが明らかに滑らかになった。1500rpm前後からしっかりトルクが立ち上がって来ている印象だ。恐らく、最大トルクなどを変化させることは無いとは思うが、トルクのカーブがより低い回転から上昇するようなチューニングをしたのではないだろうか(もしかすると高回転でのトルク落ちは早くなっているかもしれないけど)。それがエンジン自体の改良なのかECUレベルなのかは分からないが。SUVなど体躯の大きなモデルへの対応を迫られたのかもしれない。なので、ATの変速タイミングも少し早くなったと思う。よって、燃費が良化しやすくなる。勿論最初から踏み込めば別なのだが、これは毎日乗っているので明確に感じるところだ。


・エンジン音が静かになった(よりカラカラ音を聞かせない方向に)

元々問題なければディーゼルとしては静かな部類に入るが(圧縮比がやや低めなのもあるだろう)、よりカラカラ音を聞かせない方向にした気がする(特にアイドリング時)。その分より低い周波数でのドロドロしたような音が出てる気がするのと、こもり気味のエンジン音になった感じもするが、BMWもN47からB47へ移行した時にそういうエンジン音に変わった感じがする。加速時は3000rpm付近では前と変わらずそこそこ勇ましい感じもするが、嫌な感じではなく、60kmくらいに乗ってしまえば1400rpm程度なので、殆どエンジン音は聞こえなくなる。むしろ、ロードノイズのほうが目立ってくる位静かである。


・エンジンのざらつき感(ロングストローク感?)が少し良化した。

これはディーゼルに乗っているとメーカーに関係なく感じることだし、中回転重視のガソリン直噴ターボでも感じることが有るのだが、アクセルを踏んで回転を上げる時以上に、回転が落ちてくる時に感じるざらつき感が有る。それは低回転でもある程度はエンジンブレーキを効かせなければならないとか、そもそもロングストロークのエンジンではある程度仕方ないのかもしれないが、言葉では表現しきれない「ざらつき」が有るのだ。エンジン音も寄与しているのかもしれないけど、BMWの時はそれが気になった時は良く「ECOモード」で走っていた。何故かと言うと、コースティング(所謂アクセルを離すとクラッチを切ってアイドリングにしてしまう省エネ対策)がECOモードで発動するから、回転落ちの鈍さを感じなくて済むからと言うのも有った。

ジャガーXEのECOモードも変速は低い回転で繋ぐようになるし、トルクの大きいディーゼルならではのシフトダウンしないでジリジリ回転を上げていく頻度も上がる。だが、コースティングは無いようだ。

アクセルを離した時のざらつき感、ジャガーに限らず僕が一番ディーゼルを感じるのは、実はこの部分なのだ。だからたまにガソリン車に乗ると、特にエコブーストのジャガーXE辺りはショートストロークなのも手伝い、上がりだけでなく、回転の下がりもクリーンというか滑らかに感じるのだ。

要するにこれが軽減したような気がする。とは言え、インジニウム・ディーゼルは優秀なエンジンだと思うが、やっぱりジャガー・ランドローバーとしては、SUVに積んだ時に本領を発揮するエンジンを念頭に開発しているようで、ジャガーXEに載せると、スタイルから想像されるようなビューンとした軽快なフィーリングとは異なる「いかにも力持ち」なエンジンと言う風情なので、ちょっとミスマッチ感も有る気がする。それが楽しくも有るが。
但し、インジニウム・ディーゼル搭載モデルでは最軽量なので、最もディーゼルで速く走れるのも、またXEのオトクさでは有る。まぁこれも日本人の幻想でしか無く、長い距離を普通に走り、1台の生涯距離が20万kmを超えることも有るヨーロッパ人にとってはエンジンも丈夫なディーゼルを選ばない選択肢は、これだけの値段のクルマなら「有り得ない」時代なのかもしれない。


なお、インジニウム・ディーゼル・エンジンの採用モデルはこれだけ存在する。インジニウム・ディーゼルにも3種類のパワーが異なるユニットが有るのだが、日本に採用されたエンジンは今のところ中間の1つのみである(2000cc コモンレール式直噴ディーゼルターボ 180ps/4000rpm 43.8kgm/1750-2500rpm)。

☆ジャガー
XE(20d)
XF(20d)
E-Pace(D180)
F-Pace(20d)

☆ランドローバー
ディスカバリー・スポーツ(TD4)
レンジローバー・イヴォーク(TD4)
レンジローバー・ヴェラール(D180)

上記すべてのモデルに対して、縦置き、横置き等の違いは有るのだが、基本的に全て同じインジニウム・ディーゼル・エンジンが採用されている。また、日本には導入されていないが、これ以外にも同じベースでECUや過給器の違いによって出力が異なるインジニウム・ディーゼル(163馬力バージョン、240馬力ツインターボ・バージョン)が実際には存在し、上記モデルの多くで採用されている。

XEのような比較的キビキビとした動きを求められるスポーティ・セダンから、F-Paceやヴェラールのようにそれなりに重量のあり大きな筐体の4WD(AWD)をしっかり走らせるスペックが必要になるが、インジニウム・ディーゼルはその幅の広さを意識したチューニング、特にランドローバー系のSUVが多いメーカーなので、それらを意識したチューニングと言えるだろう。それはクラス最大レベルのトルク重視のセッティングにある。

以下は同レベルの2Lディーゼルエンジンの一覧だ。取り敢えずヨーロッパ車の2LかつDセグセダン、ワゴンで採用例の有るものを挙げている。VWアウディはまだ日本に採用されてないので省いた。

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こうしてみると、多少の差はあるが、基本設計は良く似ていることがわかる。コモンレール式直噴ターボでロングストローク、ディーゼルなので当然回転数は然程上がらないし、ピークも4000rpmで到達してしまう(つまりそれ以降は回しても力感が伸びない低~中回転エンジン)、馬力は2Lガソリンと遜色なく、ガソリンN/Aなら4L級のトルクを誇る。こんなスペックから普段使いで力強さを感じるエンジンだとわかるだろう。街乗りの出足や、低回転、高トルクを活かした高速巡航が得意なわけだ。

その中でジャガー・ランドローバーのそれは、スペック的にもかなりロングストローク寄りで(JLRとボルボのエンジンがその傾向が強い)、パワーよりも明確にトルク重視なセッティングだ。燃費はジャガーが思ったより伸びてないが、この数値程の差は同じドライバーなら出ないと思う。特に高速巡航はジャガーはかなり燃費が良い。

ジャガー・ランドローバーに限らず最近ではダウンサイジングの波もあり、2L級のエンジンと言うのはECUや過給器の調整で大小かなりのモデルに搭載される。ボルボなんて、今のところV90やXC90のような大型ワゴン、SUVですら全て2Lのエンジン、もしくはそれにハイブリッドを付け足す形で展開している。だから、このレンジのエンジン開発はメーカーの屋台骨になるのである。絶対に失敗できないので、最近では複数のメーカーで開発し、共用する事も多い(BMWとプジョーのPrince/N18もそうだし、フォードのヨーロッパ向けディーゼル[Duratorq]はフォードとプジョーが関与している。JLRもつい最近までこのエンジンを採用していた)。

そんな中で自社開発されたインジニウム・エンジンはこの先も進化していくのだろうし、それが一から作られたエンジンの宿命とも言えるのかもしれない。最初から採算ばかりを追い求めてるわけではないから今回のような対応も有ったのだろう。取り替えたエンジンは英国ジャガー持ちで海を渡って検証材料に使われるようだ。

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