-「EcoBoost(フォードエンジン)なガソリンモデルのジャガーはどうなのよ?」って話-

jaguarxepetrol01.jpg

最初に断っておくと、この話は2018年以降の新車ジャガーを買う人には関係が無いと言うか、参考にはならない話である。何故かと言うと、18年モデルから、ジャガー、そしてランドローバーのガソリンモデルの殆どはフォード由来のエンジン(エコブースト)から自社開発の"インジニウム・エンジン"に切り替わるからである。

ジャガーXE発表と同時期に久々の自社開発であるインジニウム・エンジンも登場したわけだが、先んじて出てきたのはディーゼルである。ガソリンモデルに関しては発売当初はフォード由来の"エコブースト"が搭載された。要するにガソリンエンジンの開発はXE登場には間に合わなかったとも言える。それはディーゼルが主流であるヨーロッパでは然程珍しいことではない。但し、インジニウムはディーゼル、ガソリン共にパーツを共有するモジュラーユニットエンジンなので、2年強のタイムラグで来年度モデルからXEを始め、全ての2L搭載モデルのジャガー車でエコブーストからインジニウムに切り替わると言うのは冒頭の説明の通り。

こんな事情もあり、当初からXEはディーゼルモデルのほうが俄然注目されたのだが、VWの問題も有ったりして日本の導入は発売から半年以上遅れた。なので初期モデルではフォード由来のガソリン・モデルが出回った。このエンジン、乗る分には悪いエンジンではなく、レスポンスの良くフォードでも実績を十分に積んだエンジンだと思うので(クーガやエクスプローラーにも同型エンジンが積まれたことはフォード好きならご存知だろう)、例えば中古でXEを探す際にこの感想を参考にしてもらえればと思う。考えようによっては安心してサポートを受けられる数少ない"フォード"エンジン車と言う事も出来る。エコブースト好き?なら一考の余地ありだ。

なお、自分が乗ったエコブースト・ジャガーは以下の2車種。何れも同型のエンジンだが、チューニングにより若干出力が異なる。

・ジャガーXE Prestige 20t 2000cc 直4直噴ターボ 200ps/5500rpm 32.6kgm/1750~4000rpm → 今回はこのガソリンモデルのXEの話。

・ジャガーXF Prestige 25t 2000cc 直4直噴ターボ 240ps/5500rpm 34.7kgm/1750rpm

最初にガソリンモデルの、良い所、悪い所をざっと書くとこんな感じだ。

長所
・ショートストロークらしく吹け上がりが軽快

・恐らくディーゼルより速い、若しくは加速感を感じやすい(ディーゼル[20d]とガソリンモデル[20t]の0-100kmのタイム公表値は双方とも7秒前半で大体同じだが、踏み込んだ時の馬力感に差が出る、先述の吹け上がりの良さも関係している)

・ライバルの2L標準モデルよりパワーで勝る(BMW320i→184PS、Audi A4 2.0TFSI→190PS)

・リリースから時間が経っているので(エンジンとしては2010年登場)、枯れており、実績の少ないインジニウムより細かい改善が進んでいる(はず)

・上と共通するが、エコブーストはフォードが社を上げて開発したエンジンなので自社だけでなくボルボやランドローバーなど多くのモデルで採用例がある


短所
・直噴ターボの割に燃費が良くない(設計年次が一世代前というのもある)。特に都内街乗りだと7km/Lを切ることすら有る(高速巡航なら10km/Lは超えられるが)

・ショートストロークなせいか、最大トルク、馬力の付近(加給がかかるところ)で突然加速する、所謂"ドッカンターボ"っぽい(好きな人もいると思うけど)

・上記に関連し、極低速のトルクがやや細い

・リリースから時間が経っている分、一世代前のエンジン感は有る(振動、日本には関係ないがEURO5レベルの環境性能)

・アイドリングストップが余り働かない(これはジャガー自体のチューニングも有るかもしれない)


読んでみれば分かるかと思うが、要するにこのエンジンは「長所が短所」なのである。それをユーザがどう捉えるかと言う所だろう。つまりはショートストローク特有の吹け上がりの良さはスポーティなサルーンにはふさわしいけど、現代のエンジンは省燃費、トルクを稼ぎやすいロングストローク時代である。昔はロングストロークだとかったるいエンジンになりがちだったが、今は摩擦係数などの技術が上がり、そんなに気にならない時代だ。それでもインジニウム辺りはロングストローク特有のダルさも感じるのだが、そもそも直噴ターボやディーゼルは、高回転までエンジンを回さなくても十分力の出るような中低回転向きのセッティングなので、回さなくても良くなった時代なのだ(特に回転数の低いディーゼルは知らない内に思ったよりスピードが出ているという事が多い)。

だが、エコブーストはちょっと他の欧州メーカーのそれら(直噴ターボエンジン)と味付けが異なり、ある程度軽快に吹けあがりながらクルマを走らせていくエンジンだ。とは言え、高回転型のN/Aエンジン程回す必要はない。良い塩梅って感じ。だから乗っている分にはそこそこの所で回ってる感じがクルマらしくて楽しい。

その分、燃費ではややライバルには劣る。いや、はっきり劣ると言って良いだろう。近年のBMWやアウディのそれら2L直噴ターボは、180~200PS、30kgm辺りは当然稼ぎながら、JC08モード燃費も15km/Lを超えてくるものが多いし、実際都心街乗りでも10km/L近くまで行く車種が多いが、このエンジンとジャガーXEの組み合わせだと、良くて7km/L後半、悪いと6km/L後半辺りで推移する(ジャガーXEののJC08燃費は11.8km/L)。これはショートストロークで回転の上がりやすいエコブーストがストップアンドゴーを然程得意にしてないことや、ライバルに比べてやや古い(2010年発表)設計年次もあるだろう。

直噴ガソリンターボも世に出回るようになってから10年以上経過し、VWやBMW辺りでも2世代目、3世代目のサイクルに入っている。それらは環境対策(EURO6基準、燃費向上)、静音化(特に振動など)、モジュラーユニット化(4気筒なら2L、3気筒なら1.5Lのように組み合わせでエンジンを構成できる)が進んでいる。

そういう中で言えばジャガーに搭載されたエコブーストは、1世代前の感は有る。燃費も然りだが、振動系、これはR世代のミニのエンジン辺りもそうだったけど、冷却ファンの作動頻度や振動が多いエンジンだった。とは言え、R世代ミニ(2代目、R56系)で積まれたPSA(プジョー・シトロエングループ)とBMWで共同開発された通称"Prince"エンジンはアップデートされて現在でもプジョーやシトロエンのガソリンエンジンではメインだ。

つまり、ヨーロッパでは既に環境対策としてEV化を急ピッチで進めており、過渡期である現在ではPHVやディーゼルのほうがガソリンより優先される。CO2排出量の多いガソリンエンジン、もっと言えば長らく自動車を支えてきたレシプロエンジン自体が急速でオワコンになりつつ有るのである。だから特にガソリンエンジンに関しては余り開発に力を入れてない傾向が目立つ。

そうは言っても、市場に出て枯れているからこそインジニウムのような未知の問題は少なく、安心して乗れるとも言えるのだ。フォード・エコブーストやPSAのPrinceエンジンにおけるこの10年のダウンサイジングにおける貢献度は高いし、十分信頼できるとは思う。

クルマ好きなら御存知の通り、フォードのエンジンは決して評価の低いものではない。元々英国フォードとしてヨーロッパ向けのコンパクトモデル、フェイスタやフォーカスは、B、Cセグメントの実用車としてVWポロやゴルフと対峙し、時には彼らの立場を脅かすほどの評価やセールスを欧州ではあげてきた。残念ながら日本ではアメ車のイメージが余りに旧態依然なところもあり(実際にアメ車と言えば古くてデカいそれらか、ハマーとかしか思い浮かばない人も少なくはないだろう)、セールスが伸び悩み日本市場からは撤退してしまった。それでも特にフォードにはエンスー中心にファンは多い。

そう言ったヨーロッパの「ダウンサイジング」の波の中で切磋琢磨して生まれたのが"エコブーストEcoBoost(ガソリン)"、"デュラトルクDuratorq(ディーゼル)"エンジンなので、美点も多く存在する。だから、もしガソリンモデルが欲しいと言う向きで、インジニウムではないジャガーはどうなんだろうと感じてる人がいるなら、それは全然気にする必要はないと思う。まだ自分もインジニウムのガソリンモデルは乗ったことが無いのだが、リリースしたてのエンジンは大小問題が多いだろうから(別の回で触れたが、自分のインジニウムXEなんてエンジン交換中だ)、チョイスして後悔することは無いと思う。先述の通り今となっては日本でサポートを受けられる数少ないフォードエンジン搭載車種なので、そういうエンスーにも◯である。

もし、PORTFOLIO(25t)のガソリンモデルが中古でタマがある場合、これは同じ2Lでもハイパワーモデル(240PS)なので、Sみたいなハイチューンまでは必要ないけど、速い車が欲しいという向きにはお得かもしれない。BMWで言ったら328i相当だ。

ただ、もし、ガソリン、ディーゼルは問わないとなった場合、どちらがオススメかと言われれば、僕はやはりディーゼルかなとは思う。

そもそもこのくらいのモデルの2Lグレードの性能数値はどこのメーカーも似たり寄ったりだ。大体200馬力前後で、そこそこ速く、街乗りでも気後れするようなことは皆無である。そこに近年登場したのがクリーンディーゼルな訳だが、その進化はめざましく、ガソリンと同じ2L直噴ターボで馬力は勝るとも劣らず(BMWの2Lはディーゼルのほうが最早馬力も上だ)、トルクでは圧倒する。更には環境性能(CO2排出量)もディーゼルの方が有利で、燃費は大きな差が付く。特にストップアンドゴーも多い都内では直噴ガソリンターボは意外に伸びないので、燃料費でのコスパは大きくディーゼルが勝る(燃費自体も良いし、そもそも燃料費がハイオクと比べ最大40円/L位差がつく)。計算次第では5年乗って数十万の差が出る可能性もある。これは大きな話だ。

だから、前も書いたが、余程ディーゼルに恨みでも無い限りこのレンジではディーゼルを選ばない手はないのである。正直代車で2週間程度ガソリン車に乗っていると、軽やかな吹け上がりはともかくとしても、その燃費の悪さと燃料費の高さ、そしてそれを埋めるような性能差が無い現実から早く自分のクルマを返して欲しくなる。

もう一つ言うと、このエンジン、たしかに吹け上がりも良いし、軽快なのだが、個人的には何というか気持ちのよいエンジンとまでは行かない気がする。回した時のエンジン音もやや金属的で心地の良い音とかではないし、もう一つ丁寧さにかける感じがするのである。音もややうるさめである。直噴ターボで近いところだと、以前乗ってたVWイオス2.0TSIは当時のGTIと共通の直噴ターボだったのだが(馬力も200馬力で近い)、もっと上品でフラットかつ振動も少なく回る良いエンジンだった。VWグループの2Lエンジンはそれこそ多くのモデルやアウディにも流用される基幹エンジンだし、開発には世界一お金をかけているとも言えるのだが。

もし300馬力以上必要なら、スバルWRXとかそういうのを選ぶとか、金に糸目を付けないのならBMWのM3とかそういう選択肢も有るわけで、普通にスポーティでそこそこ速い車と言うのであれば、ジャガーXEに関しては(BMWにも乗っていた自分としてはBMW3シリーズでも)、中古とかで探している時のオススメはやっぱりディーゼルだ。

別の回でも書いているが、インジニウムの実績のなさから来るネガも有るには有るし、良く言われる「ディーゼルの絶頂感の無い加速」は慣れが必要かもしれないが、基本的には十分良いエンジンだとは思うし、このクラスにおけるディーゼルの恩恵は燃費、性能(坂道や巡航では特に)共に小さくない。ま、それでも新しいジャガー自体がまだまだ人柱な部分も有ると思うので、中古とかでもサポートを受けやすいメーカー認定の中古車を勧めるけど。

そんな訳で、僕的にはやっぱりディーゼルだけど、ガソリンモデルも良さは有るので後は好みかと。来年には出回るインジニウム・ガソリン車も乗る機会が有ればまたここで。


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。