独断比較編 ~ジャガーXE vs BMW3シリーズ~

-ジャガーが持つ個性と、これから目指していく所-

ジャガーXEに乗り換えて半年強、日々乗ることで解る良いところ、改善すべきところはここまでも文章では触れているが、せっかく直前までジャーマンスリーの一角、ジャガーが目標とするライバルの一つ、BMW3シリーズに乗っていたのだから、分かりやすい比較をしてみようと思う。

結果から言うと、数値や、単純に良いと感じるところだけを挙げるのなら3シリーズの圧勝となる。それはここまでも書いてるように、一日の長以上の積み重ねの差が有ることが大きい。しかもDセグのスタンダードとも言える天下の3シリーズだ。ジャガーの場合今までの英国車が積み重ねてきたものは、波乱の歴史含みで殆ど失っているところからのスタートなのだ。そして、よしんば昔からの英国車の伝統を紡いでいたとしても、それは世界での競争能力を持たない時代に入っている。だから今のジャガー・ランドローバーは何処か無国籍的と言うか、典型的なプレミアム・ヨーロッパ車像を目指している最中である。

だから、まだまだ磨かなければならないところは多いし、荒削りな部分も多々ある。でも、数値や評価だけでは表せないのもまた"クルマ"であり、愛すべき欠点に惹かれてしまう人間も少なからず居る。もうね、昔のシトロエン・ファンなんて、それ以外の人たちからみたら、ドMか、何かおかしな人達なのかという位苦労してる訳だけど、それでも乗りたい魅力が有るからシトロエンはシトロエンなのである。

今のジャガーがそこまで極端なことは無いけど、やっぱりジャーマンスリーを目指していても、どこかにイギリスの残り香がそこかしこに漂っているのがジャガーで、それは既に今のミニでも味わえないところなので、イギリス車の復活にロマンを感じているのなら、それもまた然りなのである。

ま、それでも3シリーズに乗るよりはディーラーに行く回数、来てもらう回数は増える気がするけどね(笑)

というわけで、一覧を作ってみた。項目は思いつきだし、比較しているのは完全主観ということで細かいことは勘弁してもらえればと思う。比較したのは以下の2車種。

・ジャガーXE Prestige 20d[X760] (セダン/2000ccディーゼル)

・BMW 320d Touring Luxury[F31] (ステーション・ワゴン/2000ccディーゼル)

なお、3シリーズはマイナーチェンジ前モデルなのでN47エンジンのモデルである(現行はB47エンジン)。だから厳密には現行モデルの比較にはならないが(買い替えてるので時系列上当たり前だけど)、F30,F31と呼ばれる現在の3シリーズは2012年に登場してから現在まで一度マイナーチェンジを迎えながらもベースは変わらず、またエンジンもアップデートレベルと言えるので、参考にはなると思う。

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水色の項目はメーカー公表値なので比較云々という所ではないが、サイズからエンジンスペック、プレミアムカーに必須といえる多段AT、環境対策、燃費など多くの項目で近い値となっている。このサイズのクルマも燃費も走りも良くてが当たり前の時代になりつつ有る。

表の方はかなり細かくなったので、全てはカバーしないが、おさらいすると、先ず燃費周りだが、先述の通り、近年のクリーンディーゼル(直噴ガソリンターボもそうだけど)は巡航時にかなり燃費が伸びる傾向にある。一番の走りの余裕を見せる時も高速なので、やはりクリーンディーゼルのコスパを実感できるのは高速巡航なのかもしれない。どちらのクルマでも金沢まで約500km、往復1000kmの旅をしたことがあるが、とにかく法定速度なら間違いなく20km/Lを超えられる。もっと出しても高速時の燃費は抜群に良いのが昨今のクリーンディーゼルである。僅かだが、巡航が続くと、トルク分の余裕のせいかジャガーのほうがやや燃費は良い気もする。

都心、特に燃費が悪くなりがちな都内でも両方共そこそこ健闘するが、やはりJC08モードの差どおり、BMWの方がやや燃費は良い気がする。ラフに走っても10km/Lを中々下回らないBMWに対して、ジャガーは都内だけだと10km/Lを下回る時がある。それでも直噴ガソリンターボとかよりはだいたい上の値に来ると思う。ジャガーはフォード系エンジンのガソリンモデルと最新インジニウムエンジンであるディーゼルモデルの燃費差が結構出やすい。ガソリンモデルは都内だと7km/Lを割る時が普通にある(JC08モード燃費は11.8km/L)。この辺りはやや世代が前のフォード系エンジンとの差もあるだろう。

パワー、トルク感だが、スペック上僅かに馬力で劣り、トルクでBMWを圧倒するジャガーだが、トータルの扱いやすさやここ一番の力感はBMWに譲る。ジャガーの性能曲線が公表されていないので何とも言えないが、ジャガーのそれは、やや急激にトルクが盛り上がる。言葉で伝えづらい部分だが、2000rpmを超えると突然加速し始める。それだけ最大トルクが強烈なのかもしれないが、裏を返せば、それ以下がやや弱い感じも。BMWの方は最大トルク前から結構走りやすいトルクが出ているのである。双方とも4000rpmで最大馬力に達するが、その時のパワー感は明らかにBMWの方が力強く感じる。ジャガーの場合、突然トルクが盛り上がる割にパワーがそれに見合ってないので力強さを感じづらいのかもしれないが。この辺はスペックだけで表せない、枯れたエンジンチューニングの差かも知れない。

遮音は双方とも余程ディーゼルに恨みでもない限り少なくとも車内では気にならないと思う。勿論アイドリングや加速時の音感はガソリンのそれとは異なるが、巡航しているときには下手なガソリンエンジンよりよっぽど静か。要するにうるさい云々より、ディーゼルの「カラカラ」音や、振動がどうにも気に障る人が日本には多いんだと思う。うるさいだけならV6以上の3000ccエンジンの始動音なんて夜中にかけるのを躊躇うようなモデルも多い。でもガソリンのそれは格好良いけどディーゼルが勇ましいと、こんなのは高級車ではないと、そうなる人が多いんだろうと思う。まぁそれは過去のディーゼルのネガからも来てるんだろうけど、ハイブリッドやEV以外の欧州のスタンダードははっきりとディーゼルなのも事実。実際ヨーロッパでは同じモデルならディーゼルが売上の6~8割を占めている。新しいエンジンも殆どディーゼルから開発する。インジニウムもそうだった。プジョーなんてディーゼルは新しくてもガソリンは未だにR5xミニ時代にBMWと開発した1.6Lの直噴ターボ(N18/Prince)をアップデートしながら殆どの車種で使っているのだから(最新の話題SUV、3008ですらそうだ)。なので欧州かぶれ的に「今はディーゼルでしょ、普通」というしずり方も、また一興かと(笑)。

それはともかく、強いて言えば圧縮比の分だけBMWの方がディーゼルっぽいかな。ジャガーからディーゼルらしさを感じるのはやや吹け上がり時に重々しさ(ざらつき感)や低い回転で極端にトルク感を感じる坂道くらいだろうか。吹け上がり自体はディーゼル云々の前にインジニウムの特性かもしれない。

但し、他の記事で触れたように、僕のジャガーは早々にバランサーシャフトやマウントがおかしくなり、そのあたりから完全に「トラック」みたいな音をしている時が有る。このあたりの耐性というか、初期不良は人柱で良くなっていくのではないかとは思うが、耐性の課題は今後も出てくるかもしれない。1年以内にエンジン交換って何かリコールレベルじゃないかなと思うし。まぁその辺りの手厚いサポートは有難いけど。

スポーティなハンドリング、足回りと、日曜ダンナ仕様と隔世のデザイン(それでもちょいワルオヤジに好かれそうなセクシーさも違う意味でオッサンっぽいのかもしれないが)はジャガーの少ない優位な部分。特に足回り、ここまで3シリーズに肉薄しているとは思ってなかった。ここは試乗した瞬間に分かった所。フロントサスにダブルウィッシュボーンと言うBMWなら5シリーズ以上のグレード向けサスを履いてるのも有るのかもしれないが、硬すぎない上で滑らかに路面を捉え、ロールしない足回りは素晴らしい。3シリーズの足も乗り心地の面では素晴らしいのだが、もう少し保守的というか家庭的。M-Sportsとかに設定されているスポーツサスペンションもチョイスできるのでLuxuryは穏やかの方に振っているのかもしれないけど。

インテリア周りに関してジャガーは、デザインこそ一瞬見た時のタイトで低いポジションと、囲まれるような造形に"モダンな英国車像の提示"を感じるが、細かく見ていくと、この価格帯の車としてはもう少し素材を見直してほしい部分も有る。全体的にソフトパッドが意外と少なく、プラスチッキーな感じがそこかしこにある。特にプロペラシャフト上、クルマのセンターライン部分周辺はアームレスト部分も含めてそういった配慮が足りない。光沢性の高いピアノブラック調のセンターコンソール部分もどうも色気が足りない。傷つきやすいだけのように見えてしまう。アルミ素材を全面にあしらっている上位クラスのXFは写真で見るといまいちなのだが、実際乗ると細かい所の高級感が良く出ていて、クラスの違いを感じる。XFも代車で乗ったことが有るので何処かで言及したい。XEやSUVの登場でやや地味になってしまっているが、XFは高級車の基本が出来ている良いクルマなのだ。

BMWはデザインに色気が無いのはいつもの事だけど、やっぱり毎日使っていると、素材感、使いやすさ、高級感が程よく滲み出ていて、何というか、大人しめにしているけど育ちの良さは隠せない的な良質さが有る。BMWに限らず近年のドイツ車のインテリアの高級化はかなりレベルが上がってきている。昔は機能美以上は余り考慮しない所も有ったが、各社デザインも個性が出始めているし、激しい戦いも有るので素材もケチってない感じがする。そこはもう少しジャガーも頑張らないと。昔なら木目を全面に押し出して威圧出来たかもしれないが、造形や素材感で勝負するとまだまだ良くも悪くも英国気質が見え隠れしてしまう。

広さに関しては、4シリーズと色を分け、最初からファミリーを強く意識している3シリーズと、その間を行くジャガーXEの違いも出ていて、実寸以上にジャガーには広々さは感じない。むしろタイトに感じるようにデザインされている。実際の使いやすさにおいても、ドアサイドポケットの間口やアームレストボックスもジャガーは小さく、余り実用的ではない。かと言って3シリーズが日本の軽ワゴンのように生活感満載で痒い所に手が届く的な仕様ではないのだが(それを否定してるわけではなく、実用性で生活に寄り添う車と3シリーズはまたユーザのニーズが異なると思うので)、さり気なく容量が大きかったり、ペットボトルが置けたり、デザインを犠牲にせずそれをやれているので、ボディサイズを勘案すればジャガーも今後もう少しそこはアップデートしていくべき所だとは思う。それが4ドアで5人乗れるサルーンの宿命でも有る。

価格は近いレベルのグレードなら大差はないが、ぶっちゃけた話値引率などは販売網や日本での販売実績で代理店の力も強いだろうし(BMW東京だけでなく、ヤナセなどもいるので)、単純にXEとF30世代の3シリーズの比較なら、出てからの年数もあり、3シリーズのほうが安く買えるのではないだろうか。ジャガーは実質的に登場してから2年位、それに比べると今の3シリーズは2012年からモデルチェンジしてないので、そろそろモデルチェンジも近いだろうし(既に7,5シリーズがモデルチェンジしたので時間の問題だろう)、そういう時は大体値引率が上がる。あと、3シリーズには1.5L 3気筒エンジンを搭載したエントリーグレードの318iも出ている。メルセデスも1.6LのC180、アウディには1.4LのA4が有る。ジャガーXEには2L以下のエンジンが存在しないと言うか、まだインジニウムは2Lのみしか世に出ていない。モジュラーユニットなので今後3気筒1.5Lエンジンも登場するかもしれないが。

セーフティは今の時代のこのクラスに最低限付いているべきものは双方とも標準装備されている。既に今モデルチェンジしているモデルは次の世代に入っているので、モデルチェンジやマイナーチェンジでアップグレードはされていくだろうと思う。ただ、ジャガー・ランドローバーはXE、XF以外のACC、走行アシスト系は何故か未だに高額オプションなので、そろそろこの辺りはどうにかすべき。フランス車、イタリア車辺りもそうだが、そういうテクニカルな部分がやっぱりドイツ車よりもワンテンポ遅いのが現状ではある。最新のレンジローバー・ヴェラール、ジャガーE-Paceですら標準装備でないのには閉口すらさせられる。BMWグループならミニ・クロスオーバーにもちゃんとACCは標準装備化された訳だし。

ま、XEには付いてるので(SEグレードだけは付いてない)、そこは安心してよいかと。オプションでアラウンドモニターとかも選べます。

インフォテイメントに関しては他の回で触れているので書かないけど、InControlはそのインターフェイス、機能だけでなく、システム的な安定感も含めてまだ全然駄目な所があるので、アップグレードを待ってと言うところかな。とにかくジャガーXEは前の遺産が無いクルマなので(Xタイプは反面教師になったというだけで何も流用されてないので)、成長は待ってあげるべきかと。そんなの出来るかと言う人にはハッキリと向かないクルマでも有るのが今のジャガー全般に言えることでは有る。

凄く端的に言うと、今後ジャガー・ランドローバーが目指すところは、ジャーマンスリーのサルーンやSUVと対峙しながらもユニークさ(個性)を求める層を取り込み、ドイツ車以外の欧州車好きの興味も取り込み、イギリス車に惹かれる層にモダン(現代的)な英国車像を確立していく事ではないだろうか。

それらを実現するためにブラッシュアップも続けていく事だろう。イアン・カラム・カラーのデザインも初代XFから浸透まで10年近くかかっているわけだから、簡単にぶれないことかなとは思う。

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