ジャガーXEに至る経緯と英国車史の背景 -その2-

-ミニが牽引する英国車の現在と矛盾、そこを埋めにかかるジャガーの戦略-

イアン・カラムの思想を色濃く反映し、それまでのクラシックなスタイルと別れを告げ、更に経営がフォードからタタ・モータースに変わった最初の作品が2007年、1サイズ上の”ジャガーXF”だった訳だが、まぁその変貌ぶりと何となく覚えづらいデザインには当初全くついていけなかった。

特に初代XFは、イアン・カラム他デザイナーズサイドにも変革に対する躊躇と過渡期対応が有っただろうと思われるデザインへの葛藤がそのまま現れていて、丸目を中途に残した前照灯や、クラシカル感を残すためのメッキ感の強いグリル周りは、それまでのナロー(スタイルという意味で決してジャガーは小さくないけどね)でクラシカルなスタイルに毒されてきた自分には俄に受け入れられない類のものだったのは間違いない。

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Sクラスの後を受けて登場した初代XF。今見ると旧デザインとの葛藤が透けて見えるフロント周り。何かびっくりしたような顔つきにも。スタイルは大きく変わったが実は初代XF、Sタイプのシャーシを流用しており、開発力も含めてまだまだ過渡期だったことを伺わせる。

寧ろ今日のジャガー的”デザイン言語”が完成するのは、次の2009年に発表された”XJ”で、内部的には丸目4灯ながらも鋭い目つきのユニットデザインになった前照灯、サイズを上げ光沢感を抑えたフロントグリル、より流麗さに振り切ったクーペスタイルなど、「もう、古いジャガーはここにはありませんよ」という一種の決別的な割り切りが見て取れる。

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上が現在のXJ、下がそれまでのXJ(書くまでも無いかもしれないけど)。モデルチェンジと言うか別の車と言っても良いと思う。

この後程なくしてXFもXJ寄りのフェイスリフトが行われる。

XJ辺りからは作る側もデザインとして慣れてきた感が有ったが、やっぱりそれでも僕はピンとこなかった。と言うか批判多かったでしょ。いや、むしろジャガーだと気づいてない人が多数だったのでは?だって、ジャガーのブランドイメージを作り上げたあのXJがこんなに変わっちゃったんだもの。前モデルの無い(実質Sタイプなんだけど)XFとは違ったインパクトを与えたと思う。

特に「欧州車ではなく英国車が好き」という人達には、新しいXJが例え「優れたヨーロピアン・サルーン」で有っても「伝統的(コンサバ)な英国高級車のフラッグシップ」には全然見えないからね。

良く、ブランドイメージを確立するのは最低10年かかると言うけど、その通りで、このイアン・カラム流ジャガーを世間が認識、評価するには結局10年近くかかって今が有るんだと思う。僕はそのサイクルで評価した典型なんだろうな。戦略通りか。

古臭くてもそれまでのジャガーは多くの人を魅了してきたわけだし、それを覆して「新しいモダンなブリティッシュカー」のイメージを浸透させるのはそれだけ大変だし、地道な忍耐も必要なんだと思う。実はそれが苦手なのが日本車だよね。名前もデザインもコロコロ変えちゃうので一時的には売れても続かないモデルも多い。BMWなんて番号が車名で、それを50年近く続けていて今が有るわけだから。ゴルフはずっとゴルフだしね。プリウスがそれを今後できるかどうか。

デザインや路線をテコ入れしつつも、まだタタ初期のジャガーは過渡期で、むしろタタは先にランドローバーにテコ入れした感じがするのは僕だけじゃないと思う。その最初の成果が大ヒット作"レンジローバーイヴォーク"なわけだ。もはやアーバンコンパクトSUVの代表格として町の至る所で見かける。ワイドアンドローなディメンションでスポーティなデザイン、後ろ下がりのルーフ、今までのランドローバーの無骨さとある意味対極にあるクールなスタイルは今につながるSUVブームの先陣を切ったと言っても良い。これが無ければX4、X6とかGLCのクーペみたいな「クーペそのまま大きくして持ち上げてSUVにしました」みたいなスタイルがこんなに市民権を得なかったかもしれない。

つづく

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